就活に失敗したオタク

就活にしっぱいして無職のオタクの戯言です。

就活日記その3 さてさて就職活動の結果はいかに

 

 

 

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結果は当然のように芳しくなかった。本命の会社は春と秋の両方に選考に参加し、どちらも最終選考の段階で落とされてしまった。不思議なものだ。理事のおじさん三人と談笑をし、その後健康診断を受けた末に不採用の通知が届いたのである。僕はなにかの間違いではないのかと真剣に問いただそうとしてしまった。例えば受験者を前の人と間違えてしまったんじゃないか。とか、メールを誤って送信してしまつたのではないか。とかそういうたぐいのミスを想定した。人事に連絡して「いいさ、人には大なり小なりミスをすることがある。世の中に完ぺきな人間なんていないんだ。」と肩をポンとたたいてやりたかった。しかし、どうやら僕は確かに選考の結果、「本人の意思にそぐわない結果となってしま」ったのである。

 

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 太宰治人間失格という作品に登場する大庭葉蔵は精神病院に収容されたとき、「わたしは普通の人間ではないと額に判を押せれたのだ」と驚愕する。彼にとって、精神病連に収容されることが他人と自分を隔てる境であり、条件であったが、僕にとって本命の会社から送られてきた不採用のメールはまさに「君はわが社に不必要な人間だ」と断定する非常にソリットで暴力的なものだった。僕は額に不採用の文字を打ち込まれてしまった。その時点で僕の就職活動はおしまい。「さあさあ、不採用の判を押された君はあの道を進んで出口に向かいなさい。ここは君のいるところではないんだよ。」とフォーマルな服装をした男性に諭されるように僕は就職前線から引き下がった。前線でただ敗北し、一矢報いることもなく。

 

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 ほんの少しだけ補足をすると僕は一つの会社から内々定をいただいていた。業界の中では業績が最も高く今後つぶれることもなかろうと一般的に語られる会社だった。バイトをして興味を持ち、インターンに参加、社員と食事、そのまま選考に進み、社長と呼ばれる今にも破裂しそうな熟れたトマトを想像させる方とお話をした。そして「君はなんに使えるかわからんけど面白そうだから採用」となった。いまその流れを俯瞰すると、どこにも淀みがない美しい流れの川のようだった。

 

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 しかしその会社は僕が志望する業界と重なる部分はあれど、かなり遠い分野だった。牛乳と豆乳の関係性に近いかもしれない、どちらも乳製品だが動物由来か植物由来かという大きな差がそこには存在する。利用する人も牛乳と豆乳を、レモンティーとミルクティーのように気分によって飲み分けたりはしない。牛乳は牛乳としての役割があるし、豆乳は豆乳としての役割を担っている。どちらも相譲れない関係性なのだ。相譲れない理由があるが故に僕はどこかでその会社に入ることをためらっていた。この業界に入ってしまったら二度と希望する業界には戻ってこられないのかもしれない。豆乳を五年間飲み続けた人間が突如朝食に牛乳が添えられていたら、いぶかしがるに違いない。ひょっとしたら激高して妻に手をあげるかもしれない。そのような危険性を強く感じたのだ。

 

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 体は嫌がっていても、まだ僕は社会的な人間として括り付けられていて、「本命がだめだったら無職になるよなあ、まいっちゃうよなあ、女の子も23歳無職はきついだろうなあ」という思いからとりあえずのところ滑り止めとして保持することにした。以前話した通り、僕が志望する会社は選考の時期が遅いため、かなり長い期間入社の意志決定を保留することになる。内々定をいただいた企業は学生の意志を尊重してくれた(目的は非常に利己的だったかもしれない)。習慣的に運動を行うことで心身がともに健康そうな人事の方が「君が納得する就活をすることが一番重要だろう。だから私たちは就活が一通り終わるまで返事を待つよ」とおっしゃった。そして僕は実に4か月の間返事を保留することになった。

 

さようなら。